職場で起こる大人のいじめ

2019/11/27

お役立ち情報

あなたは、職場でパワハラやセクハラを受けたことがありますか?現在、パワハラ、セクハラといった、いわゆる「おとなのいじめ」問題が、取り沙汰されています。パワハラを背景に持つと思われる事件がニュースに上ることも少なくありません。今回はこれら、おとなのいじめについて取り上げていきます。

いじめは子どもだけのものではない

「いじめ」と聞くと、子どもをイメージすることが多いかもしれませんが、いじめは子どもの間だけに起こるものではありません。職場などでも起こっていて、社会問題にもなっています。また、最近では直接的ないじめだけでなく、
SNSなどを利用したネットでのいじめも急増しています。

いじめの原因は、不満やストレスのはけ口であることが多いようです。携帯電話の普及などにより、直接的なコミュニケーションを取ることが以前より少なくなってきています。そのため、人間関係を培ったり、感情をコントロールすることが苦手な人が増えました。そうして、内側にストレスを溜めることになった結果、そのストレスの矛先として、弱者が標的にされるという構図もあるようです。

いじめのように、集団が各々持つ欲求不満を解消させるために、その集団のうちの一人を攻撃しようとする集団心理を「スケープゴート」と言います。スケープゴートは、心理学用語の1つでもあり、古代ユダヤ教で贖罪のため、人々がヤギを生贄にしていたことから名づけられました。

「おとなのいじめ」具体的には?

おとなの職場いじめとしては、パワハラ、セクハラ、モラハラなどが、代表的な例として挙げられるでしょう。ご存じの方も多いとは思いますが、1つずつ簡単に見ていきましょう。

パワハラ(パワーハラスメント)
上司から部下など、立場を利用して暴力(言葉や態度によるものも含む)を振るったり、出来もしないような要求をしたりして肉体的、または精神的な苦痛を与えることを言います。上の立場であることを利用して、業務上の事柄に留まらず、人間性にまで言及し、尊厳を傷つける人も少なくありません。

セクハラ(セクシュアルハラスメント)
相手の意に反するような性的な言動を行うことで、相手に不利益になるように仕向けたり、就業環境を悪くすることを言います。セクハラも、パワハラと同じく、職場の力関係を利用することが多く、異性間に限らず同性間のセクハラもあります。また、新入社員や非正規雇用の人がターゲットにされるケースも多いようです。

モラハラ(モラルハラスメント)
身体的な暴力ではなく、「無視する・嫌味を言う・悪い噂を流す・意味ありげな態度でバカにする」など、言動や態度による精神的な苦痛を相手に与えることを言います。こちらはパワハラ、セクハラよりも最近になってよく聞くようになった言葉ですね。

<パワハラとモラハラの違いは?>
パワハラが直接的な暴力を含むのに対して、モラハラはあくまで精神的な苦痛を与えるものを言います。また、パワハラが立場などの優位性を利用して行われることが多いのに対し、モラハラには、力関係ばかりでなく、同僚など同じ立場の人間から行われる場合も含まれます。

ドイツ出身の心理学者で産業医でもあるハインツ・レイマンの「職場で受けるいじめの5段階」という理論があります。1から5へといじめが進んでいくと、やがては部下が健康を害してしまうと言われています。

(1)部下の自己表現を妨害する
(2)部下を孤立させる
(3)同僚の前で部下をこきおろす
(4)仕事上で部下の信用を傷つける
(5)部下の健康を危険にさらす

上司と部下だけでなく、正社員と非正規社員といった関係でも、こういった職場いじめは起こりやすくなります。

「おとなのいじめ」の事例は?

それでは、おとなのいじめの事例を見てみましょう。

派遣で働くA子さん(36歳)

A子さんは、派遣会社から、「高いスキルを持った人材」としてB社に派遣されてきました。しかし、会社に入ってすぐにA子さんは異変を感じます。挨拶しても、A子さんには挨拶を返してくれない、皆に配られているお菓子が、A子さんにだけ配られない、指示にはなかったことを作業が終わった後に言ってくるなど…。
A子さんは、苦痛を感じてはいたものの、社員の中には気安く話しかけてくれる人もいたため、何とか出勤できていました。しかし、ストレスはA子さんが思う以上に深刻だったようです。人間関係を悪くするわけにはいかないと我慢に我慢を重ねた結果、A子さんは、出勤時間になると、ひどい頭痛に脳まされるようになりました。そのせいで、仕事の作業効率も落ち込み、最終的には仕事のできない社員として、B社から派遣会社にクレームがいくようになってしまいました。

職場でのいじめは、例えば、仕事上の指導や注意を装った形で行われることが多いようです。人間である以上、多少のミスや苦手な仕事があるのは当然なのですが、周囲がそのことを必要以上に指摘することによって、どんどん追いつめていきます。

その結果、「自分はミスばっかりで、なんでこんなに仕事ができないんだろう」と自信を喪失していきます。こうして、本当は能力があっても周りから「仕事ができない」と白い目で見られるようになった被害者は、段々と職場内で孤立し、ついには、自己都合退職となってしまうこともあります。それでも、まだ自己都合退職ですむなら良いですが、あまりにストレスがかかってしまった場合、うつ病になる恐れもあります。

もし「おとなのいじめ」にあってしまったら…

職場であなたが「つらい」と感じているようなら、それはもう立派な「いじめ」です。もしも「おとなのいじめ」にあってしまったら、以下のような対策をとりましょう。

  1. いじめの内容を記録する
    いじめの事実を明らかにするために、受けた被害とその日付・時刻などを記録しておきましょう。可能であれば、録音しておくのも有効です。いじめの事実を何らかの形で記録しておくことで、被害を裏付ける重要な証拠となります。

  2. 話を聞いてもらう
    家族や仲の良い友人に話を聞いてもらうだけでも、気持ちが少し晴れるかもしれません。また、もし可能であれば同じ職場の先輩や後輩に話をしてみましょう。本人が「つらい」と感じていても、いじめが表面化せず、周りの人たちが気付いていない場合もあります。職場の信頼できる人に相談することで、出来るだけあなたと加害者が接触しないですむように調整してくれる場合もあります。
    また、上司などに相談すれば、部署異動なども考慮に入れてくれるかもしれません。自分の中に溜めこんでしまうのが1番良くないので、誰かに吐き出すようにしましょう。職場によっては、ハラスメント対策窓口がある場合もあるので、そういう場を利用するのも良いでしょう。

  3. 法テラスに相談する
    法テラスは、国が設立した法的トラブル解決の総合案内所です。「職場は敵だらけで、誰にも相談できない」「上司に伝えたが、見てみぬふりをされたり、我慢するように言われた」という場合には、こちらを利用するのも良いでしょう。適切な相談窓口を紹介してくれたり、無料で法律相談を受けることができます。
    ※利用するためには、条件がありますので詳しくはHPをご確認ください。

  4. 労働局に相談する
    各都道府県にある労働局に直接相談するのも良いでしょう。
    労働局は、国の行政機関の1つで、厚生労働省の所管となっているものです。職場のパワハラ相談なども無料で受け付けています。相談する際には、先ほどご紹介したいじめの記録も役に立つでしょう。ただ、法律的な力があるわけではないので、勤め先が話し合いに応じなければ、問題が解決しないということもあります。

ここまで、いろいろな対策をご紹介してきましたが、職場いじめが起こるということは、 職場内に良くない風潮がはびこっているという証かもしれません。その場合は、たとえ何か1つの問題が解決しても、また似たような問題が表面化する恐れがあります。

また、真っ向から戦おうとすることで、火に油を注ぐことにもなりかねません。ですので、職場に相談できるような人がいない、皆が皆いじめに加担してくるというような場合は、転職するというのも1つの手かもしれません。

そのとき注意してほしいのは、求人広告の掲載内容です。若手の採用をやたらとアピールしていたり、給料が不自然に高かったり、面接で業務内容などについての具体的な説明がなかったりする場合は、もしかしたらブラック企業の可能性があるかもしれません。コーディネーターなどに相談して、転職先をしっかりと見極めることが大切です。


日本では、時間外労働の上限規制の導入や有給休暇の確実な取得など、2019年4月1日から働き方改革関連法案の一部が施行されています。
また、2020年4月1日からは、雇用形態による待遇差を避けるため、同一企業内において、正規雇用労働者と非正規雇用労働者の間で、基本給や賞与などの個々の待遇ごとに不合理な待遇差が禁止される予定です。
※中小企業は、2021年4月1日からを予定

正社員、非正規社員と聞くと、本来は働き方の違いだけなのに、正社員の方が立場が上なんだ、と何となく思っている方も、もしかしたらいるかもしれません。また、現在、非正規社員として働いている方で正社員の人と対応が違うと悩んでいる方や、正社員ばかりが評価されて不満が募っている方もいるでしょう。

非正規社員の場合、正社員の人よりも仕事量が少なくなることが多いため、担っている業務も一部分となり、やりがいを感じられず、ストレスを抱えてしまったり、自分を実際よりも低く評価してしまうということもあるかもしれません。

働き方改革が広く浸透し、労働者の満足度が上がって、結果的に職場でのいじめが少なくなると良いですね。もし、実際にいじめにあっても無理は禁物です。あなたは何も悪くないのだから、落ち込む必要はありません。自分に自信を持って、つらい時は誰かに吐き出すようにしてくださいね。

 ライター紹介:かたこりこ
大学では心理学を専攻。卒業後は、ラジオ番組の原稿やフリーペーパーの執筆、教科書系出版社勤務などを経て現在に至る。趣味は読書、映画・お笑い鑑賞。東京都出身。冬生まれだけど、寒いのは苦手です。