環境の変化で起こりやすい適応障害って?

2020/02/13

お役立ち情報

就職や転職してから、何だか体調が悪い…もしかしたら、それは適応障害かもしれません。適応障害は、環境の変化によるストレスで起こる病気です。今回は、この適応障害を取り上げていきます。

適応障害とは?

新たな環境になじんでいく課程で、心身に不調が表れ、生活にも支障が出てくるものを「適応障害」と言います。

適応障害は、進学、就職・転職、結婚、定年退職など、人生の節目で経験する環境の変化に対応しきれず、引き起こされます。五月病はその代表例です。

私たちが、新しい環境に身を置いた時には、その環境に適応するために無意識のうちに防衛機制が働きます。防衛機制とは、不安や罪悪感などの感情を抱いた時に、その気持ちを弱めたり、避けたりすることで心理状態を安定させる作用のことですが、ストレスが限度を超えた時には、働かなくなり、適応障害を起こすのです。

まず、防衛機制にはどんなものがあるのか、見ていきましょう。

反動形成…自分の気持ちとは裏腹な行動を取ること
例)気の弱い性格なのに強がりを言う。

置き換え…愛情や憎しみなどの抑圧された感情を、それを受けた対象ではなく、別の対象にぶつけること
例)職場で上司から嫌がらせを受けている人が、部下に嫌がらせをする。

合理化(正当化)…できなかったことに理由をつけて正当化し、自身を納得させること
例)企業の選考に落ちたあと、どうせ第一志望ではなかったから構わないと思う。

退行…前の発達段階に戻ること
例)(欲求不満が長く続いた時など)指をしゃぶるなど子どものような行動を取る。

逃避…体調不良や空想によって困難な現実から逃れようとすること
例)会社に行きたくないと思っていたら原因不明の腹痛が起きた。

昇華…性的衝動や攻撃衝動などを自身の活動に転化すること(主にスポーツや芸術活動で解消することが多い)
例)失恋したのでランニングを始めた。

では、これらの防衛機制が効かないほどのストレスを受けてしまうと、どんな症状が出てくるのでしょうか。

適応障害の症状

適応障害の症状は、主に下記のものがあります。

情緒面の変調・・・不安、抑うつ、焦燥感など

身体面の変調・・・不眠、食欲不振、倦怠感、疲労感、頭痛、肩こり、腹痛など

能力面の変調・・・仕事や作業に集中できない、物忘れがひどくなるなど

行動面の変調・・・遅刻、欠勤、早退、アルコール依存、ギャンブル中毒など

上記に記載していない症状でも、本人がストレスによって心身の不調を感じたり、強い苦痛を感じたりして、生活に支障が出ている場合は、適応障害と判断されます。また、人によっては1つの症状だけでなく複数の症状に悩まされることもあります。

適応障害の症状は、一般的に原因となるストレスから3ヵ月以内に出現し、6ヵ月以上続くことはないと言われています。しかし、そのストレスが続いた場合は、症状が長引く可能性があります。また、放置していると、うつ病になることもありますので注意が必要です。

適応障害の診断基準は?

適応障害は心の病気ですので、不調の症状に合った科で診てもらっても、なかなか治らない場合があります。症状が長引いている場合、また判断に迷う場合には心療内科や精神科を受診しましょう。

適応障害の診断基準は、国際的な診断基準を参考に定められています。診断基準を要約すると以下の通りです。

1、はっきりとしたストレスになるような原因があって、3ヵ月以内に症状が出現する

2、著しい苦痛に悩まされ、生活に支障が出ている

3、他の精神疾患でも、死別反応でもない

4、ストレスとなる原因がなくなると改善し、6ヵ月以内によくなる

適応障害は必ず何らかの「原因」があって症状が出てくるものです。そのため、特に原因は思い当たらないけれど、何らかの不調に悩んでいるといった場合には適応障害とは言えません。

適応障害の治療法は?

適応障害の治療として、まず考えなくてはいけないのは、原因となっているストレスを軽減していくということ。例えば、通勤時にストレスがあるのなら、家を出る時間をずらしてみる、職場に苦手な人がいるなら、出来る限り距離を置くなど…。しかし、職場や家庭などが原因の場合、なかなか環境を変えられないことも多いですよね。

そこで、必要なのが、何をどのようにストレスとして感じているのかを客観的に見つめること。もしかしたら、あなたが今までストレスとして感じてきたものには何か一貫性があるかもしれません。ストレスの原因が分かったら、今度は自分で何か改善できることがないか考えてみましょう。

ストレスの感じ方は人それぞれです。もしかしたら、あなたは人一倍ストレスを感じやすいタイプなのかもしれません。ストレスの捉え方を今一度見直してみると良いかもしれませんね。

関連コラム: ストレスに強いタイプの人って?

心療内科や精神科では、適応障害の治療として精神療法(心理療法)が行われます。また、認知行動療法(ストレスに対して自分がどのような考え方や行動パターンを持っているかに気づき、そのパターンを変えていく方法)が取り入れられる場合もあります。

それでも、なかなか症状が軽くならなかったり、環境を改善しても苦痛が続いたりした場合には薬物療法が用いられることもあります。医師と相談しながら、治療を進めていきましょう。

良くなってきたからといって、治療を中断したり、病院に行くのをやめたりするなど勝手な判断は、くれぐれもしないようにしてくださいね。

適応障害になったら仕事はどうすれば良い?

病院に行き、適応障害と診断された場合、必ずしも仕事を休職したり、辞めたりする必要はありませんが、信頼できる上司など誰か1人にでも話しておくと安心です。その際、業務量を減らせないか相談してみるのも良いでしょう。もし、状況を伝えても、人手が足りないからとたくさんの業務を押し付けられるなどといった場合は、ブラック企業の可能性もありますので、転職を視野に入れるのも1つの手段かもしれません。

自分に合う仕事って?:コーディネーターに相談する

適応障害は甘えではありません。「自分が弱いからだ」と思わずに、辛い症状が出ていたら我慢せずに病院に行くようにしてくださいね。

身近な人が適応障害になったら…

家族や友人、職場の同僚など、身近な人が適応障害になったら、「頑張れ!」という一言は決して言わないようにしましょう。その言葉を受けて、体に不調が出ているのに無理に頑張ってしまったり、プレッシャーを感じてしまったりして、本人はさらに辛い気持ちになってしまうかもしれません。

また、心配になるのは分かりますが「何があったの?」などと原因を探るのもやめましょう。もしも、本人が悩んでいることについて口を開いた時には、話をよく聴いてあげるようにしてくださいね。他の人にはなんてことはない環境でも、その人にとっては強いストレス要因になることはめずらしくありません。「何でそんなことで?」などと本人を責めることはやめましょう。

そして、もし、辛い症状に本人が悩んでいるようなら、心療内科や精神科の受診を勧めたり、付き添ってあげたりするようにしてくださいね。適応障害は、誰もがかかりうる病気です。環境との折り合いをうまくつけられれば、適応障害は改善していきますので、長い目で見るようにしてください。

<参考書籍>
日本経済新聞 2019年6月15日「元気のココロ」
決定版 面白いほどよくわかる!心理学 渋谷昌三 西東社 2017

 ライター紹介:かたこりこ
大学では心理学を専攻。卒業後は、ラジオ番組の原稿やフリーペーパーの執筆、教科書系出版社勤務などを経て現在に至る。趣味は読書、映画・お笑い鑑賞。東京都出身。冬生まれだけど、寒いのは苦手です。