「人数が少ないと問題なく話せるのに、大勢の人の前では緊張して話せない」、また「初対面の人と話すのが苦手」こんな方は多いのではないでしょうか。今回は、気楽に話せるようになるにはどうしたら良いかを考えていきましょう。また、対人恐怖症についてもご説明していきます。

大勢の人を前にするとなぜ話せなくなるの?
大勢の前で話せないのは、人前で話すことに対して不安を抱えていることが背景として考えられます。「うまく話せなかったらどうしよう」「失敗したら、どう思われるだろう」などと考えることによって緊張が高まるので、失敗しやすくなります。
また、思い入れが強いと「失敗してはいけない」という気持ちも強くなるので、余計に緊張する原因となります。
不安を和らげるには、場慣れをすることが有効です。例えば、会社のプレゼンなどがある場合は、家族や仲の良い友人を相手に予行演習を行ってみましょう。一度やってみると、「ここはもう一回練習しておこう」など事前に確認できたり、「練習のとおりやれば、本番もうまくいく」と自信がついたりするため、「失敗したらどうしよう」という不安が減り、落ち着いて本番を迎えやすくなります。
また、思い入れが強いのは良いことでもあるのですが、強過ぎると逆に緊張が高まり失敗する可能性もあるので、動機づけを弱めることが対策として有効です。「失敗してはいけない」と考えるのではなく、「少しくらい失敗してもいいや」くらいに考えられるように気持ちを持っていきましょう。気持ちが楽になりますし、リラックスすることで、失敗しにくくなります。
よく知られている「手のひらに『人』という字を書いて飲み込む」という緊張を和らげるためのおまじないがありますよね。残念ながらこのおまじない自体は迷信に過ぎないのですが、こういった行為は落ち着きを取り戻す効果があるので、信じて試してみると効き目があるかもしれません。
また、緊張している時には、自然と呼吸が浅くなるので、意識的にゆっくりとした呼吸をするようにしましょう。とにかくリラックスできるように心がけることが大切です。
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初対面の人と話すのが苦手なのはなぜ?改善方法は?
大勢の前で話すのも苦手だけれど、初対面の人と話す時も会話が続かない、気が重いという方も多いかもしれませんね。そして、特に初対面の人と話すことに苦手意識が強い場合、就職の面接などで、人一倍緊張することでしょう。その背景には、「面接官が何を質問してくるのか分からない」「面接でうまく回答できないかも」という不安や自信のなさがあるかもしれません。そういった不安や自信のなさは、悩めば悩むほど増大してしまうもの。
先ほどご紹介した予行演習をすることも有効ですが、面接では予想外の質問をされることも多く焦ってしまうこともあるかと思います。でも、焦ってパニックになると、余計に答えが出てこなくなってしまうので、そんな時こそ「深呼吸」をして気持ちを落ち着かせましょう。
その場ですぐに答えが出ないときには、「少しお時間頂いてもよろしいですか?」「勉強不足で分かりかねます。申し訳ございません」などと返答することで、印象が悪くなるのを防ぐことができます。答えが出てこないからといって、焦ってとんちんかんなことを言ったり、無言になったりするのはやめましょう。
転職エージェントであるパセリスタッフなら、面接にもコーディネーターが同行しますので、緊張しやすい人でも安心です。
また、初対面の人と話す時には、事前にできるだけ相手の情報を集めておくと会話がしやすくなります。相手の情報を知っていることで、あなたにとって相手は「知らない人」ではなくなるからです。相手の情報を集めておけば、不安が起こりにくく、落ち着いて話すことができるようになります。
近くに他人がいると、自分のことがどう見られているのか気になって、その結果、不安が生じる場合もあります。これを「対人不安」と言います。大勢から注目された時、知らない人と話す時などに、この対人不安が生まれやすいと言われています。大勢から注目される発表の場などに立つ場合は、「自分が思っているほど周りは注目していない」「失敗しても死ぬわけではないから大丈夫」などと自己暗示をかけることによってその場を切り抜けやすくなります。
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人と接する時に尋常でないほど緊張する場合は対人恐怖症かも…

人と接する時に普通では考えられないほど緊張してしまい、日常生活がままならない…という場合は、対人恐怖症の可能性があります。対人恐怖症は、10人に1~2人がかかるとも言われています。
対人恐怖症は、診断基準(DSM…アメリカ精神医学会出版の精神疾患診断分類)の改訂により、現在では、社交不安障害(Social Anxiety Disorder:SAD)に分類されています。ただ、一般的には対人恐怖症のほうが馴染みがあると思いますので、今回は対人恐怖症としてご説明します。
対人恐怖症に悩む人は、女性に多く、その数は男性の約2倍と言われています。対人恐怖症は10代で発症することが多いのですが、実際に日常生活に支障をきたすのは、20~30代が多いと言われています。
これは、就職し社会に出ることで、それまで関わってこなかった人とも関わらなくてはいけなくなったり、それまで体験しなかったことに直面することで、戸惑ったり、悩んだりすることが原因だとも言われています。
どんな人が対人恐怖症になりやすいの?
対人恐怖症になりやすい人の特徴には、
・他者の存在を気にし過ぎる
・真面目で完璧主義
・神経質
・恐怖心を持ちやすい
などが挙げられます。
また、対人恐怖症は、幼い頃の体験が影響しているとも言われています。例えば、もともと繊細な性格の子どもが、友達に失敗を笑われるなどして傷ついたことにより、人付き合いが苦手になっていくことがあります。それでも、学生の間は何とか過ごしていくものの、就職してから会社で上司に叱られたりすることが大きなきっかけとなり、ついには人前に出られなくなったり、話せなくなってしまったというケースもあります。
対人恐怖のタイプは?
対人恐怖症には様々なタイプがあります。ここでは、その代表的なものをご紹介します。
赤面恐怖
人前に立つと、顔が赤くなってしまう。
スピーチ恐怖
発表や披露宴などで、スピーチする時に強いプレッシャーを感じてしまう。
視線恐怖
人が自分のことを見ているような気がしたり、他人の視線が怖くなってしまう。
会食恐怖
自分が食事をしているところを人に見られると、緊張して食べられなくなってしまう。
電話恐怖
他の人に聞かれていると思うと緊張して、電話が取れなくなってしまう。
書痙(しょけい)
人前で字を書こうとすると、手が震え、うまく書けなくなってしまう。
対人恐怖症かもしれないと思ったら…
人と接することへの不安や恐怖が著しく、仕事を含め生活に支障が出ている場合は、精神科や心療内科で診察してもらい、治療を受けましょう。
治療法としては、薬物療法のほかに、認知行動療法、森田療法などの精神療法・心理療法があります。「薬物療法」では、緊張や不安を和らげる薬が処方されます。「精神療法・心理療法」では、対人の不安についての受け止め方を変えていったり、悩んでいる自分自身を受け入れたりして、不安を抱えていても生活に支障が出ないようにしていきます。
心療内科や精神科のクリニックでは、対人恐怖を専門に診ているところも多くありますので、ホームページなどで調べ、事前に電話やメールなどで問い合わせてみるのも良いでしょう。
対人不安にならないためにはどうすれば良い?
対人恐怖症とまではいかないまでも、誰でも人と接する場面において、緊張や不安を覚えることはありますよね。そんな時は、次のような方法を試してみてください。
生活習慣を見直す
生活習慣が乱れていると、普段は何でもないことでも、過敏になったり、不安を抱えやすくなったりします。残業や長時間労働による睡眠・運動不足や、不規則な食生活、飲酒のし過ぎなど、心当たりはありませんか?また、カフェインの取り過ぎも悪影響を及ぼします。もし、心当たりがあれば、意識して改善していきましょう。
鏡の前で笑顔を作る
職場で、「あの人には会いたくない」、「会議が憂うつ」などの思いを抱えていると、無意識のうちに表情がこわばってしまうことがあるかもしれません。表情がこわばっていると、周囲の人に悪い印象を与える可能性があります。
そうならないためにも、出勤前や休憩時間などには、鏡の前で自分の表情をちょっと確認するようにしてみてください。もし、暗い顔や緊張しているような顔をしていたら、鏡の前で意識的に笑顔を作ってみましょう。そうすることで、顔のこわばりも和らぎ、気持ちまでリラックス出来るようになります。
積極的に自分からあいさつをする
苦手な人と接する時には、自分からは声をかけづらいですよね。でも、声をかけづらいからといって接触を避けていると、相手からの印象も悪くなってしまいます。そうなると、なんとなく気まずくなり、場合によっては険悪な雰囲気になってしまう可能性もあります。
苦手な相手でも、積極的に自分からあいさつをしてみましょう。あいさつをすることには、相手の気持ちを和らげ、あなた自身の緊張をゆるませる効果もあります。
対人関係に不安を抱いている人や対人恐怖症(社交不安障害)の人は、他人から見られることを強く意識し、「失敗してはいけない」という思いを抱いていることも少なくありません。
そのことが過剰な緊張につながり、症状が出ている場合もあるため、意識してリラックスすることが大切です。
不安を感じた時には「少しくらい失敗しても大丈夫」と、心の中で唱えるようにしてみましょう。きっと少しずつ心の緊張がほぐれていきますよ。
<参考書籍>
決定版 面白いほどよくわかる!心理学 渋谷昌三 西東社 2017
よくわかる心理学 渋谷昌三 西東社 1999
仕事などで人と接するのが不安な方へ~対人恐怖症を克服するためには?
ライター紹介:かたこりこ
大学では心理学を専攻。卒業後は、ラジオ番組の原稿やフリーペーパーの執筆、教科書系出版社勤務などを経て現在に至る。趣味は読書、映画・お笑い鑑賞。東京都出身。冬生まれだけど、寒いのは苦手です。